技術案内

開発秘話

物理学的発見から始まった、
「ボールSAW」という無限の可能性。

ボールSAWの原理を用いて、先進的な研究開発に取り組むボールウェーブ。
各種センサの開発秘話や今後の可能性、展望などについて、同社の研究に携わる主要メンバーに話を聞きました。

※2021年11月15日に外部機関より取材頂いた内容を開発秘話としてご紹介しています(撮影時のみマスクを外しています)。

工学博士

代表取締役社長赤尾 慎吾

東北大学名誉教授

取締役研究・開発部長山中 一司

工学博士

取締役製造・技術部長竹田 宣生

工学博士

取締役事業開発部長塚原 祐輔

※今回はZoomにて対談に参加

Q1. ボールSAWセンサの開発経緯や秘話を教えてください

球体の表面を赤道(大円)に沿って伝わる表面波の性質を発見

山中:そもそもの始まりは、携帯電話にも使われている「SAWフィルター」の研究です。SAWとは、Surface Acoustic Waveの略であり、表面波のこと。SAWフィルターとは、SAWの原理を用いて周波数を選別し、個別に割り当てる機能を持ったデバイスのことです。このデバイスに最適な材料の研究などを進めている時に、ボールベアリングのメーカーから「表面波を活用し、ボールベアリングのキズ(欠陥)を見つけることができないか」と問い合わせがありました。それでいろいろ試行錯誤しているうちに、球体の表面を赤道(大円)に沿って伝わる表面波が同じ幅を保ったまま伝搬する性質を見つけたのです。

赤尾:「表面波は伝わるにつれて広がりが次第に衰えていく」というこれまでの物理学の常識を覆す大発見です。この仕組みを用いて、本来の目的だった表面波デバイスを、フィルターだけではなくセンサとして使うことができるのではないかと考えました。

山中:球の上に表面波が回るという現象の例で、最もわかりやすいのは地球です。地震が起きるとその地震波が広がり、反対側に集まって、また広がって戻ってくるという現象が実際に地震観測所で観測されているんです。この原理を応用し、球状の圧電体の赤道上にすだれ状の電極を設置すると、表面波は音速で繰り返し周回するということがわかりました。これが「ボールSAWセンサ」です。

Q2.超微量水分計の開発秘話や活用事例、今後の可能性について教えてください。

水分計を作るという発想は当初無かった

竹田:私はCREST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)でガスクロマトグラフの開発研究を行っていたのですが、そこで使っていたセンサでは、どうしても水分が邪魔してうまく計れなかったんです。それならむしろ、ボールSAWセンサを用いて、水分計を作ってみたらいいのではないかと考えました。

赤尾:そう、竹田部長が仰るように、水分計を作るという発想は最初からあったわけではありません。本来の研究内容ではないことも、「何か変だな」と疑問を持ち、とことん調べてみることが、新しい発見やブレイクスルーにつながるんですよね。

超微量水分計
FalconTraceシリーズ

竹田:そうですね。実際にこの超微量水分計は、水分を嫌う製造工程においてとても役立ちます。例えば半導体の素子を作る過程では、水が入ると不具合が起きてしまいますし、車などに使われるリチウムイオン電池も、製造工程で水が入ると寿命が短くなってしまいます。水と言っても肉眼で見えるようなものではなく、気体中の水分濃度1ppb(10億分の1)レベルの、まさに超微量な水分です。

塚原:例えばスマートフォン内部の配線はナノメートル単位です。髪の毛の1万分の1、10万分の1という世界なので、その製造過程で水があると影響が出てしまいます。超微量水分計は、今後もそういった製造分野で活躍の場が広がっていくと思います。

Q3. 携帯型ガスクロマトグラフの開発秘話や活用事例、今後の可能性について教えてください。

軽量でコンパクトなガスクロが必要に

山中:携帯型ガスクロマトグラフの開発は、JAXAとの共同研究によるものです。火星探査のためにロケットに分析装置を載せたいけれど、従来のものだと重量がありすぎるということで、ボールSAWセンサを用いた軽量でコンパクトなサイズのガスクロマトグラフの開発に挑戦しました。

竹田:宇宙用との開発と並行して、地上用途の携帯型ガスクロマトグラフも開発しました。現在はプロトタイプの提供ですが、さまざまな分野で活用できると確信しています。

赤尾:最近は食品系の企業からの問い合わせがありますね。代表的なものでは、生鮮食品の「美味しいタイミング」を探したいというニーズ。それからお酒や醤油、ワインなどの醸造品で、発酵がどれだけ進んでいるかなどの品質管理の目的で使用したいという声もあります。

山中:土壌中の汚染物質の検出、有毒ガスや異臭の検査などにも活用できますね。生体ガスの検出も可能なので、呼気や腸内ガスから病気の早期発見にも貢献できるかもしれません。

Q4. ボールSAW水素ガスセンサの開発秘話や活用できる分野について教えてください。

水素社会への関心が高まり、みんなが熱くなっていた時代

赤尾:実は、私たちが最初に着手したのは水素ガスセンサだったんです。ちょうどその頃、水素社会への関心が高まり、みんなが熱くなっていた時代です。水素ステーションでは水素センサが必要になると認識していて、開発することで社会の役に立てるのではと考えました。

山中:製品のプロトタイプまでは進んだのですが、社会的に水素の普及が思ったよりも進まず、いったんペンディングになったんですよね。

竹田:そうですね。最近になって自動車の水素タンクを作っているパートナー企業で使えたらということで、研究を復活させました。もちろん、当初の目的であった水素ステーションでの活用も視野に入れています。

塚原:さらに、今注目を集めているカーボンニュートラルの問題にも、水素ガスセンサが関わってきます。主にヨーロッパでは、再生可能エネルギーから作った水素を貯めておこうという発想がありますが、貯めるには水素をきちんと管理しなければなりません。そこで私たちの水素ガスセンサの活用が期待されています。

竹田:水素ガスセンサに関しては、エネルギー問題と自動車、二つの分野でアンテナを張っているところです。

Q5.「ボールSAW」から広がる今後の可能性についてお聞かせください。

「ボールSAW」でできることはたくさんある

山中:最近では、新型コロナウイルスの流行によってウイルスを検知するセンサの開発も進めています。不活性化したウイルスを容器の中に入れて、発生した物質を検出することが可能になったので、ゆくゆくは空気中にあるウイルスを検知できるようなセンサを作りたいと考えています。

竹田:ウイルスを検知できるようになれば、感染経路を辿ることも容易になります。空港や医療機関など、さまざまな場所で活躍してくれるはずです。

赤尾:ほかにも、ボールSAWプラスαのセンサを作れないかというアイデアもあって、「センサで何かを計りました」というだけでは終わらない、センサから得られるデータに何らかの価値を生み出せたらと思っています。

山中:ただ、やはりこだわりたいのは「ボールSAW」の部分です。私たちはボールSAWセンサでさまざまな開発を行っていますが、最初はセンサ自体が、ボールSAWを用いたデバイスとしての一つの応用型でした。つまり、センサは確かに重要な応用ではありますが、そこにとどまる必要はないと思っています。

赤尾:そうですね。社名を「ボールウェーブ」としたのは、あくまでボールSAWの原理を軸としているからです。この原理をもっと研究していけば、センサではないまったく新しいデバイスも生み出せるかもしれません。

竹田:この4人は量子コンピュータのプロジェクトメンバーでもありますから、そういう世界にも広がりが出てくるのではないかと思います。

塚原:光の制御や通信にもボールSAWを用いることで、新しいデバイスが生まれる可能性はありますね。

赤尾:テーマの大小に関わらず、「ボールSAW」でできることがたくさんあるんです。これからも既成概念にとらわれず、新たな価値創造へ向けて研究開発を進めていけたらと思います。

※2021年11月15日に外部機関より取材頂いた内容を開発秘話としてご紹介しています(撮影時のみマスクを外しています)。