ガスクロ活用事例
日本の代表的な発酵食品「味噌」の風味の違いを香気成分から分析してみました
国際発酵・醸造食品産業展への出展を機に、日本を代表する発酵食品である「味噌」に注目しました。
ひと口に味噌といっても、原料となる麹の種類や熟成方法、地域ごとの製法によって、その風味は実にさまざまです。かつては各家庭で味噌を仕込むことも一般的で、「手前味噌」という言葉があるほど、地域や家庭ごとに個性豊かな味噌がつくられてきました。
今回は、味噌の奥深い世界に触れる第一歩として、特徴の異なる3種類の味噌を用意し、それぞれの香気成分を分析・比較しました。
味噌の香りは、主原料である米・麦・大豆の違いに加え、発酵・熟成の進行度合いによって大きく変化します。本事例では、Sylphを用いて市販の豆味噌・米味噌・麦味噌の3種類を分析し、銘柄ごとの香りの特徴を比較しました。
各味噌1.0 gをバイアルに採取し、40℃で15分間加熱しました。その後、発生したヘッドスペースガスを極性カラム内蔵のSylphに捕集して分析しています。
図1に示すクロマトグラムからは、3種類の味噌で明確な違いが確認できました。約3.9分に検出されたエタノールのピークは、麦味噌が最も大きく、続いて米味噌、豆味噌の順となりました。豆麹は米麹や麦麹に比べて糖質が少ないためエタノール発酵が進みにくいこと、また豆味噌は熟成期間が長く、その間にエタノールが揮発しやすいことが一因として考えられます。
豆味噌では、エタノールより低沸点側の約3.2分に、ほかの2種類の約4倍の強度をもつピークが検出されました。この成分は酢酸エチルと推測されます。一方、麦味噌では複数の固有ピークに加え、約7.9分に大きなピークが見られ、酢酸イソアミルと推測される成分が検出されました。米味噌は、約7.9分のピークを除くと顕著な固有ピークが少なく、3種類のなかで最もシンプルな香気プロファイルを示しました。
このように香気成分の観点から比較すると、麦味噌はエステル類が多く、華やかな香りが特徴の味噌といえます。米味噌はエステル由来の香りが比較的控えめで、すっきりとした印象をもちます。豆味噌はエタノールが少ない一方で、ほかの成分に由来する特徴的な香りが際立つことがわかりました。
3種類の味噌の分析はいかがでしたでしょうか。本事例でご紹介した分析は、試料の前処理を必要とせず、その場で迅速に測定結果を得られる点が特長です。発酵状態の確認や製品開発、品質管理など、幅広い場面での活用が期待されます。
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